
0:000:00
<p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span>▼あ――ア。確かな事実は一つもわからぬ。わからぬ筈だよ不思議は御座らぬ。</span>凡およ<span>そ天下が広いというても。人の脳髄ホントに調べて。腹の立つほど簡単明瞭。奇妙キテレツ珍妙無類な。脳の作用を</span>見貫みぬ<span>いた者なら。問わず語りで</span>烏滸おこ<span>がましいが。ここに居ります</span>私わたくし<span>ばっかり。……なぞと云うたら皆さん方は。そういうお前の脳味噌だけが。毎日</span>天日てんぴ<span>に焼かれたお蔭で。</span>性しょう<span>が変って</span>来きた<span>ものダンベイ。なぞとお笑いなさるか知らぬが。</span>真実ほんと<span>にそうダンベイかも知れぬが。そこが私の道楽仕事じゃ。世界各地の博士や学者を。アッといわせる研究</span>仕遂しと<span>げて。二十億万人類社会の。アタマの入れ換えするのが楽しみ。いずれそのうちその論文なら。或る大学から発表されます。それを御覧になったらわかるよ。ほかのあらゆる世界の学者は。脳の研究しかたを知らない。見当違いの思惑ずくめで。多分だろうと思った位の。</span>真実まこと<span>めかした</span>当筒砲あてずっぽう<span>だよ。一つの道理は説明出来ても。ほかの事実が解釈出来ない。あちらを立てればこちらが立たない。九尺二間に雨戸が二枚じゃ……スカラカ、チャカポコ。チャカポコチャカポコ……</span><br /><span> ▼あ――ア。九尺二間に雨戸が二枚じゃ。まして</span>況いわ<span>んや朝から晩まで。</span>走馬燈籠まわりどうろう<span>か百色眼鏡か。猫の眼玉じゃ、七面鳥じゃと。泣いて笑いつクルクルチラチラ。千変万化の秘術をつくす。人の心のその正体が。どんな姿の形のものやら。それがどうして狂うたものやら。酒屋の半七さんではないが。どこにど...