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<p style="color:#333333;font-weight:normal;font-size:16px;line-height:30px;font-family:Helvetica,Arial,sans-serif;hyphens:auto;text-align:justify;" data-flag="normal"><span> その図は、西洋の</span>火焙ひあぶ<span>りか何かの光景らしかった。</span><br /><span> 三本並んだ太い</span>生木なまき<span>の柱の中央に、白髪、</span>白髯はくぜん<span>の神々しい老人が、高々と</span>括くく<span>り付けられている。その右に、</span>瘠や<span>せこけた蒼白い若者……又、老人の左側には、花輪を戴いた乱髪の女性が、それぞれに</span>丸裸体まるはだか<span>のまま縛り付けられて、足の下に積み上げられた薪から燃え上る焔と煙に、むせび狂っている。</span><br /><span> その</span>酷むご<span>たらしい光景を額面の向って右の方から、黄金色の</span>輿こし<span>に乗った貴族らしい夫婦が、美々しく装うた</span>眷族けんぞく<span>や、臣下らしいものに取巻かれつつも</span>如何いか<span>にも興味深そうに悠然と眺めているのであるが、これに反して、その反対側の左の端には、焔と煙の中から顔を出している母親を慕う一人の小児が、両手を差し伸べて泣き狂うている。それを父親らしい壮漢と、祖父らしい老翁が抱きすくめて、大きな</span>掌てのひら<span>で小児の口を押えながら、貴人達を恐るるかのように振り返っている表情が、それぞれに生き生きと描きあらわしてある。</span><br /><span> 又、その中央の広場の真中には、赤い三角型の</span>頭巾ずきん<span>を冠って、黒い長い外套を羽織った鼻の高い老婆がタッタ一人、</span>撞木杖しゅもくづえ<span>を突いて立ち</span>佇とど<span>まっているが、如何にも手柄顔に</span>火刑柱ひあぶりばしら<span>の三人の苦悶を、貴人に指し示しつつ、</span>粗まば<span>らな歯を一パイに剥き出して...